詩人である谷川俊太郎さんとイラストレーターのNoritakeさんがタッグを組み、出版された平和とせんそうについて考えるこの絵本。
へいわとせんそう

文:たにかわ しゅんたろう
絵:Noritake
出版社:ブロンズ新社
発行年:2019年
ページ数:32ページ
見どころと特徴
ページの左右で、人や風景、場所など様々な環境で「へいわ」な時の世界と「せんそう」の時の世界を対比し、同じ物や同じことをしていても、こんなにも違うということを深く印象付ける仕上がりになっています。
例えば
「へいわのぼく」は、えへんと胸を張っていて元気いっぱいだが
「せんそうのぼく」は、両膝を抱え込んで落ち込んでいる様子。
「へいわのぎょうれつ」は保育士さんと歩く小さな子どもたちが見えるが
「せんそうのぎょうれつ」は鉄砲を担いで行進する兵隊さんたちが見える。

他にも、へいわの雲とせんそうの雲では、ぞっとする描写のせんそうのくもなど、争いのある時と無い時では、これほどまでに違うのかという事がシンプルな絵と言葉、白と黒だけで表現したモノクロの色合いもあって、しっかりと読み手に伝わる様になっています。
これまでにない絵本
平和で温かな世界と恐怖で凍りついた世界の対比を同じ人、物、場所の条件で見開きごとにここまで比較した絵本は他に無いと思います。
そして、無駄なものを省いて、出来る限りシンプルな作りと短文にしたことで、子どもから大人まで幅広い年齢に伝わりやすく、受け入れやすいようにしている点も凄いなと感じました。説得力があります。
「戦争が終わって平和になるんじゃない。平和な毎日に戦争が侵入してくるんだ。」
「」内文章引用:谷川 俊太郎さんの言葉より
最後のページには、とても重要なメッセージが書かれていて、「絵本に敵、味方と表現しているが、どちらも同じ人間で、同じ空を見ているということ」を教えてくれます。
国や文化は違っても、同じ人間で、同じように人と暮らし、毎日を過ごし、同じ空、同じ地球で生きているのです。
平和を考える、知っていくうえで、小さな子どもから大人まで、大切なことを教えてくれる素晴らしい絵本だと感じました。
世界平和が訪れる日は無いのかもしれませんが、誰であっても同じ人間、命の価値を決めることなんて出来ません。
生きとし生ける者は全て大切な尊い命だということを、心で学習できる作品だと思います。
コメント